■ 定型パターンについて12018.1.8

長年私は人間の姿勢緊張が筋骨格系がおおむね対象であるのに反して、個人差を持ちながら一定の偏りを持って維持されていると主張してきました。

このような姿勢緊張の偏りは、立位、膝立ち、よつばいなどのいわゆる抗重力姿勢のみならず、臥位を含めてさまざまな中間姿勢においても認めることができます。

そしてその内容を大まかに言ってしまえば次のようになります。
身体の左右の関係において、いずれか一方の側の静的な緊張を相対的に高めているということであり、同時にその関係を構築し維持するための出力が対側から送られているということでもあります。

さらに、もっとも注目すべきであると思うのは、健常ではこの状態が固定的なものではなく状況依存的に変化するものであって、一気に反転してしまうようなことも容易に起こりうると言うことです。

私はこれまでの経験からこういった現象は、人間の姿勢制御における特異な側面ではなく姿勢戦略の根幹を成すものだと考えるようになりました。

一方で私は片麻痺の方の治療において、基本的には身体の(姿勢の)対称性を追求してきた、言い換えると非対称姿勢=病的に対して対象姿勢=正常という暗黙の前提の下に臨床に向かっていたと思います。
ですから今は、さらに具体的に問題の解釈を深める必要を痛感しています。

例えば、その観点からすれば歩行周期も運動学の分析とは異なるのであって、片麻痺特有とされる分回し歩行の内容が健常者の日常的な歩行パターンにも含まれていると考えています。
ですから、下肢機能に関連する治療手技の問題提起と仮説検証にその修正度合いを用いています。
施術後の健常モデルの歩行では、定型的な固定側での立脚はその傾向が薄まり、同側への骨盤の偏倚と股関節の屈曲固定が緩和するので、立脚期を通じて股関節の伸展が継続します。また、骨盤の偏倚によって可能となっていた外側の支持構造(腸脛靱帯など)への依存が弱まるので膝が解放されると共に離床におけるつま先の強調された蹴りが必要なくなります。
なによりも両側で股関節の伸展が滑らかに進行するのですから歩行スピードが上がります。
それでは施術前における健常者の歩行は異常であったのだろうか?そうではないはずです。施術後の状態は短時間の内に消えて(対称性は消えて)もとの歩行パターンにもどります。つまり通常では非対称であり、分回しの要素を含んでいるのです。

それでは片麻痺者の場合はどうかと言えば、治療が成功裏に進行した場合ですが、獲得された機能はそれなりに長期間保たれているのが通常です。

そこで考えなければならないのは、片麻痺者の定型パターンと健常者のそれは形は似ていても、そもそもの成立機序が違うのだろうか?例えば極端な表現を使うと、脳損傷にもとづく定型パターンは除脳の実験で認めるような原始反射の解放現象に準えて理解すべきなのだろうか?ということです。
健常者における姿勢戦略の根幹としての理解とはまったく異なります。

いや、問題設定が少しおかしいですね。
ほぼ同じような治療手技の施術による結果の比較ですからそのことを念頭に置かないといけないですね。

長くなったので次回に続けます。

「柏塾ノート」では体操選手の一見対照的なポーズ、あるいは競歩選手の歩容にもそのような兆候が認められることを分析してきました。



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