■ 環適デモのつづき2017.6.15

 環適では通常まず総論の講義で片麻痺という障害に共通して認められる状態像について人間の(健常者の)運動行動の特性との関連(このコラムでもくどくどと書き連ねています)で話します。
 ですから初回のデモではその内容を実際のモデルさんを通じて確認しながら治療を進行させていきます。

 会場に入ってみえたときの状態は先に述べました。100人からのギャラリーが注目する中で歩くのですからどなたでも緊張します。私はその緊張の内容に注目します。
 予め控え室でご挨拶は済ませていますから、「どうぞこちらへ」というような声かけの主が治療者であることは分かるはずです。その手がかりでどの程度会場の雰囲気や配置などの状況を把握しておられるのかを観察させてもらうことから始まります。歩いている最中に「緊張しますよね」などと、遠くからどうでも良いことを話しかけて、それが動揺の原因になるのかそれとも視線を移してうまいこと受け流すのかを試すこともあります。それは観察のためだけではなくて、一旦仕切り直しをしてゆとりを取り戻すきっかけになることもあるからです。その後の進行にも大きく影響してきます。

 私の外乱に対する彼の対応は、まずお見事でした。ですからその後はそれほど気を遣うこともなく予定通りデモを進行させることができたと思います。

 身体機能の面で印象深かったのは姿勢緊張の亢進が著しいと言うことでした。四肢の動かし方が分からないというよりも、動かそうと企図すればとりあえずは素早く反応が起こせるのだけれどもすぐにその力みと連動した緊張の亢進が起こってしまい、尻すぼみのように企図した運動が息づまってしまう。外観的にはそのように感じられました。

 このように随意性が高いということは治療を進めていく上では間違いなく積極面です。しかし、ご本人にとってみれば動かせそうで力を入れ始めるのだけれどもすぐに行きづまってしまうと言う感覚は、じれったいだろうし、閉塞感も相当なはずで、障害が重度であるという意識も実際の機能水準よりは高まらざるを得ないと思われました。

 この方の端座位姿勢は、それほどまれとまでは行かないのだけれども、一つの特性が認められました。高い緊張状態にあるのだけれども、そして肘の屈曲は目立つのだけれども、その割には姿勢の非対称性が目立たないということです。

 私の経験則からの想像では、おそらくこの方の身体に発生している力学は主には内的な均衡によって成立しているのではないかと思われました。つまり支持面へ麻痺側身体を押しつけるようにしてその反力を基盤とする定型パターンというよりは、自己完結的に同時収縮を亢進させているように見えたのです。もちろん形態的には特有の緊張分布が認められ非対称性も確認できるのですがどちらかと言えばその印象を強く持ちました。

 今回の講習会のテーマが平面適応と移動空間ですから、外的な手がかりを軸に身体コントロールの糸口を切り開かなければならないであろうこの方の問題点は打って付けです。内緒ですが内心ニンマリしてしまったのも事実です(そういう不遜な考えはよろしくないと反省・・・・)。


CGI-design